2023 森 真展

個展に寄せて

彫刻の制作
　今回 展示作品を選ぶ際、過去の作品と向き合う作業がありました。ずいぶんたくさんつくったなという想いと供に、今となってはなんだか良くわからない作品もあったりします。
　作家が作品を発表するには それなりの意味や理由が必要ではないかと考えていた時期もありました。それは 彫刻を観てもらうことには時代性やメッセージ、制作意図などが問われているように思っていたからです。
　そうした経過のなかで最近腑に落ちることは、そういった難しい事ではなく、ただ ただ つくることが好きだということ。粘土と対話する単純な動機で構わないし、その境地がなにより心地よいということです。
　たしかに それなりに考えてつくるわけですが、手が勝手にどんどん動いて、いったい誰がつくっているのか わからない領域に入り込むその快感は、やってきた人にしかわからない感覚かもしれません。
　自分自身、彫刻をはじめた頃から現在までの作品を並べて、観ることによって あらためて 確認できることがあるのではないかと思っています。今はあまり頑張りすぎないことが、心を萎えさせないで次へー行く気力を与えてくれる灯です。

2023年3月　森 真

プロフィール

1956年生まれ、宝塚市出身
1984年、武蔵野美大 大学院 彫刻科卒
自由美術協会会員、日本美術家連盟会員
2015年12月　個展（銀座アートホール）
2016年5月　東京都美術館 ベストセレクション展