伊藤定夫 遺作展
遺作展によせて
作品の底辺には、弱者への想いと社会の矛盾に対する怒りなど一貫して流れる制作信念は伊藤作品の大きな魅力だ。
公害問題を扱った「煙シリーズ」、日米問題の「基地シリーズ」、経済優先で人間が追いやられる「過疎」「お元気ですか」シリーズなど、どれも社会と人間の抱える問題を正面から扱った作品が多い。
どの作品を見てもその構図は判りやすく、人間が画面に必ず登場する。単なる風景の点景人物ではなく、大小に拘わらず絵の主人公なのだ。
高速道路を見上げたり、大工場の煙突におしつぶされそうになりながらも、決して負けないという強い意志で生きている人間のしたたかな強さを持っている。それは紛れもなく、定夫さんの怒りの叫びではないだろうか。
2019年5月 佐藤 善勇
伊藤定夫略歴
1934年 東京都荒川区町屋に生まれる。
後、戦争が激しくなり、福島県飯坂に学童疎開、終戦まで。
その後、長野県伊那に家族と共に縁故疎開し、中学を卒業後上京、新宿荒木町引っ越す。
画家を志し、住宅会社の制作室で働きながら、文化学院の夜間部で学ぶ。
東光会(会友)、独立展、自由美術展、読売アンデパンダン展に出品。
1961年、日本アンデパンダン展(14回)に出品し、以後、毎回出品する。
同時期に平和美術展にも出品し続ける。
九条美術展、練馬文化の会美術会展出品。
個展 銀座画廊中島ギャラリー、大倉画廊、檜画廊、ギャラリー万葉、紀伊国屋画廊(3回)ドゥ〈deux〉画廊、
他二人展、グループ展多数
日本平和美術会会員、日本美術家連盟会員
平和美術家会議会員、練馬文化の会美術家会員
2017年9月6日 間質性肺炎と肺癌のため永眠する。
享年83歳